第13話
一方的に言い放つと、そのまま佐奈江は電話を切ってしまった。無機質に流れる不通音を耳の奥で捉らえながら、良はポリポリと頭を掻いた。
「美希とメシ食いたいなんて、今よっぽど嬉しいんだろうな。あいつ…」
良と佐奈江には、両親がいない。四年ほど前、友人の結婚式に出席する為に出かけていき、そして生きて帰ってこなかった。
後の知らせで二人が高速道路の玉突き事故に巻き込まれ、死んでしまったと聞いた時はショックで何も思いつかなかった。あっという間に通夜も告別式も終わってしまい、両親は小さな白い骨壷の中に納まった。
まだ中学一年で十三歳だった佐奈江は両親の骨壷を抱き締めたまま、一言も口を利かなかった。
そんな佐奈江を心配して引き取ろうかと申し出てくれた親戚の言葉を受け入れず、自分で面倒を見ると言い放った二十歳の良は、一浪してやっと入学できた二流大学をあっさり中退し、就職活動に専念した。
しかし今の時代、なかなか就職のあてなど見つからず、結局は両親が遺してくれた少しの貯金と、アルバイトをいくつもかけもちする事で、安アパートでの兄妹二人の生活を何とか守る事ができた。
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