第12話

「はいはい、そうですか…」

『もう、真面目に聞いてよ~…』

「聞いてるって。はい、良かった良かった」


 ぶっきらぼうに答えているものの、いつのまにか良の顔はニタニタとにやけていて、周りで弁当を食べ始めていた仲間達の冷ややかな視線を一気に集めている。しかし良はその事を気にも留めず、ひたすら妹との会話に熱中していた。


『ねえ、お兄ちゃん。今日も遅いんでしょ?』


 何分かの他愛無い会話の後、佐奈江がそう尋ねてきた。「そうだけど」と答えてやると、佐奈江はとても嬉しそうに言葉を続けてきた。


『じゃあ、今日は美希をうちに呼んでもいいよね?A判定出した自分へのご褒美って事で!』

「…はぁ?」

『美希と一緒に晩ごはん食べたいの。あっ、どうせなら泊まってもらってもいいでしょ?明日は日曜なんだし…』

「おい佐奈江、勝手に決めるな。美希にだって都合ってもんが…」

『もう、ポケベルにメッセージ出しちゃったもんねぇ。美希、仕事が終わったら迎えに来てくれるって。そういう事で決まり!今夜はごちそうにするからね?じゃあね、お兄ちゃん』

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