第11話

良には佐奈江という、七歳下の妹がいる。現在高校二年生で、ニヵ月前に十七歳になったばかりである。


 市内の進学校に通っている佐奈江は、卒業後の進路を大学への進学と決めており、学校の授業が終わればすぐに塾へと向かい、ひたすら勉学に勉めてきた。その甲斐あってか成績はいつも上位であり、先日赴いた三者面談でも、第一志望の一流大学に九十パーセント以上の確率で入れるだろうと担任に太鼓判を押してもらえた。


 うろ覚えだが、今日は塾で行われた模擬試験の判定結果が出ると佐奈江から聞いていた。塾が終わるのは午後三時。腕時計を見てみると十二時十五分を回っているから、電話をかけてきた用件は当然、判定結果に関する事だろう。


 しかし、既に分かり切っている事だけに、良はさほど大きな期待を持たずにぼそりと言った。


「模試、いい結果に終わったんだろ?」

『…ええ?何で分かったのぉ?』


 少し不服そうに言ってはいるものの、電話口から届くその明るさは消えなかった。むしろますます喜びに満ち溢れたように、佐奈江は話し続ける。


『でもその通りなのよね。信じられるお兄ちゃん?Aだよ、A判定!思っていたより、点数が取れてたの!やったね!』

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