第一章##BR##~仙崎 良・25歳、波根川美希・18歳~(10~56P)
第10話
『…あっ、もしもしお兄ちゃん?』
道路補修の工事現場にアルバイトとして入って三日目の、ある土曜日の事だった。
昼休みに入り、現場近くの空き地で、午前中にたまった乳酸を散らすように両腕を振り回していた仙崎 良は、薄汚れたズボンのポケットに入れっぱなしだった携帯電話がブルブルとバイブレーションを起こしている事に気が付いた。
昔からあまり友人が多い方ではない良の携帯電話にかけてくる相手など大体が決まっていて、液晶画面をじっと見てみれば、案の定である。通話ボタンを押して耳に当てれば、自分を呼ぶ元気で明るい声が響いて聞こえてきた。
「…何だよ、佐奈江?」
今日の仕事は午前中からかなりハードで、昼食が終わればまた辛い作業が始まる。日給の高さにつられて選んだバイトだが、これからまた夜にウエイターのバイトが控えていると思うと、正直億劫になる。通話に応える声もどこか面倒臭そうな感じになるというものだ。
『何だとは何よ、それが可愛い妹に対する口の利き方なの~?』
恐らく、電話の向こうでかなりむくれた顔をしているだろう。容易にそんな彼女の様子が想像できて、良はクックッと短い笑い声を漏らした。
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