第9話

少し顔を赤らめながら道孝が小さく怒鳴ると、亜利寿とカナエが同時に苦笑を漏らした。


「確かにね…」

「さすがにあれは、ちょっとやりすぎでしたものね」


 自分の思惑を軽くいなされたような気がして、良はますます面白くなくなり、「けっ!」と三人から視線を外す。そんな良に気が付いたのか、美希がそろそろと彼の頭に手を乗せ、ゆっくりと撫でた。


「…りょ、良ニイちゃ…。いい子、いい子です」

「美希…?」

「美希、う、う、嬉しい、です。友達は、大事に…しましょう!」


 そう言いながら、美希はとても幸せそうに微笑んでいた。


 そんな彼女を正面から見続けていた良は、半年前の日々を思い出していた。市立第二中学校・夜間学級に出会うきっかけとなった、あの日の事を――。

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