第8話

「…い、いいか、美希…」


 笑い続けている美希に視線を合わせるように、良は彼女の前にしゃがみこんだ。


「明日、ここに新しい友達が来るんだとよ」

「…んぅ?」


 良の言葉に、美希は再び首を傾げた。


「分かるか?新しい友達だぞ、美希。お前の新しい友達が来てくれるんだってよ。嬉しいよな?」


 極めてゆっくりと言い聞かせるように話してやると、それまでポカンと良の話を聞いていた美希の表情がぱあっと明るくなった。


「あ、あ、新、しい…人?お、友達…ですか?」

「そう。明日来るんだってよ。嬉しいか?」

「…はい、はい!」


 美希は満面の笑みを浮かべて、何度も何度も頷いた。そんな彼女の様子を見て、その場にいた全員も何故か嬉しくなった。


「…じゃあ、何か?」


 道孝がパソコンの電源を切り、しゃがんだままの良にゆっくりと近付いた。


「まさか明日、見学生の為に何かやって盛り上がろうって魂胆じゃないだろうな」

「…ダメかよ?」

「俺の時みたいなのは勘弁してやれって事だよ!絶対にドン引きされるぞ!」

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