第7話
よほど力強く書いているのか、良が黒板にチョークを滑らしていく度に、カンカンと固い音が散らばるように響く。その黒板に映し出された大きな文字を、少女は言葉を詰まらせながら、一言ずつ読み出した。
「…き、き、きたる…け、けん、けんが、けん…?りょ、良ニイ、ちゃん…私、よ、読めま、せん…」
「あっ、ごめんな美希?」
漢字を多く使ったせいで読めなかったかと、良は少し反省しながら少女の頭を優しく撫でてやる。黒板には『明日来たる、我が一年五組に見学生!』と書いていた。
「…見学生?」
黒板を見た道孝が、また呆れた声を出した。
「それだけの事で、あんな大声出してたのかよ。お前は?」
「…何だよ、文句あんのか?」
「美希に分かりやすく説明しろって言ってんだ。変にビビらせて、またパニクったらどうすんだよ…」
「そうですよ、良君」
亜利寿も相槌を打つ。
「そうじゃ、そうじゃ。ここにはデリケートな女の子が三人もおるんじゃ。もう少し気を遣わんかい」
カナエもそう言って良を睨んだが、美希だけがケラケラと無邪気に笑うだけで、良も道孝も亜利寿もその言葉に反応できなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます