第6話

「一体、何の騒ぎですか?教室には静かに入ってきて下さい!」

「…んな事、良に言っても無理だって。亜利寿」


 窓際の席から、亜利寿に話し掛ける声が聞こえた。


「大体、今まで良が静かにいられた時が一瞬でもあったかよ?注意するだけ損だからやめとけって」


 見ると、窓際の席に座っていた少年が、もう落ち着きを取り戻したのか、再びノートパソコンのキーボードを叩いている。しかしその顔は先ほどまでの静かなものと違い、明らかに良に対する呆れた感情を浮かばせていた。


「何だよ何だよ、道孝。相変わらず、パソコンの虫しやがってさぁ」


 良が教壇の上でからかうように言うが、道孝と呼ばれた少年はキーボードを叩き続ける事で、彼の言葉を無視していた。それが面白くなく、良は子供のようなむくれた表情を浮かばせながら、持っていた白いチョークで黒板にいくつかの文字を書き始めた。


「…んぅ~?」


 それまで黙って皆の言動を見守っていた背の低い少女が大きく首を傾げながら、ゆっくりとした足取りで黒板に近づいていった。

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