第61話
しかし、腕を遠藤に掴まれる。
「やめろ、蘭堂」
「なんでだよ。あんなこと言われてんだぞ。悔しくないのかよ?」
「悔しいよ。でも、あんなの相手にしてもしょうがない」
怪訝に睨む俺と、真っ直ぐに見返してくる遠藤。
正論を言っているのは恐らくこいつのほうだ。
だが、それで納得できないこともある。
俺は、未だに馬鹿にするように話す奴等とこんな時にも落ち着いていられる遠藤を前にして、みるみるうちに頭に血が昇っていった。
「それにさ、知ってるか?神崎の母親は男作って出て行ったって噂」
「知ってる知ってる。血は争えないってやつだな」
ゲラゲラと表すのが相応しいような笑い声と、言葉。
俺はついに逆上して遠藤の腕を振り払った。
瞬間、プリントが舞って落ちる。
「蘭堂、待てよ!」
「うるせぇ、離せ!」
「落ち着けよ!東高ダメになるぞ!」
その言葉に一瞬動きを止める。
…東高?
それが何だってんだ。
元来、俺は真尋を傷つけるものは許せないようにできていた。
「そんなもん関係ねぇよ!」
遠藤を振り切って階段を駆け下りる。
そして、突然のことに驚いた男2人がいる場所まで一直線に向かうと、そのうちの片方の胸倉を掴んで壁に押し付けた。
「蘭堂…!?な、何だよ!」
「お前等ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!」
「はっ?何のこと…」
「とぼけるな!」
状況が把握できていない様子のそいつを床になぎ倒す。
そいつは滑るように踊り場に転がり、同時に周囲から女子の悲鳴が上がった。
すると、慌てたもう1人が逃げるように駆けだし、階段を降りようとする。
タガの外れた俺はすかさずそいつを追うと、制服を引っ掴み、半ば転がり落ちるようにして2人で階下へ降りた。
「ま…待ってくれ、蘭堂!」
「さっきの話、誰が言った!?誰が流してんだよ、あんな噂!」
わめき問いかけながら、焦って逃げようとするそいつに馬乗りになる。
「し、知らない!俺はただ、本当に噂で聞いただけで…!」
「誰が流してるかわかんねぇようなこと、面白半分に広めてんじゃねぇよ!」
そして、拳を振り下ろした。
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