第13話

+++++++



学校生活はそんな風に航太や仲間達と過ごしていたが、真尋や菊乃と会う頻度はどんどん減っていった。

中学生と小学生という違いから、通学路も学校の終わる時間も別だったし、塾や習い事が同じという訳でもないため、普通に暮らしていたら接点はない。

親同士が一緒の予定を立てたりしない限り顔を合わせることはなかった。


俺の世界は学校の中にあり、人間関係の色々もそこで構築されていく。

いろんなことが小学生の頃とは違ったが、それが顕著だったのは女子達の振る舞いだった。


俺は度々女子に呼び出された。

最初に無人の実験室に来てほしいと言われた時には以前に授業で行った実験に何か不具合があっての抗議か何かだろうかと本気で思って出向いたのだが、内容は全く違うものだった。


その子は俺を好きだと言った。

「格好良いから好きだ」と。

それがその子の気持ちの動機で、俺は驚いた。


そんな事を面と向かって言われたのは初めてだった。

女の子が早熟だからなのか、それとも俺が遅れているのか…

これまで人に好意を持ったり持たれたりなんてことを目の当たりにした経験が一切なかったし、欲したこともなかった。

だから嬉しいという感覚はない。


それより不思議でたまらなかった。

何しろその子と俺には接点がなかったから。

何を以て俺を好きだと感じ、「付き合いたい」と言うのか。

その子の言うように格好良いという理由だけで成立するものなんだとしたら、本当に驚きが隠せない。

驚きしかない。


後になって航太に話すと、贅沢言うなと怒られたけれど。

よく解らないまま、希望に沿えない旨を伝えて、仲間のいる教室に戻ったものだ。


そしてもっと驚いたのが、そんなことが俺が思うよりも多い頻度で起きたことだ。


「あーあ、なんでこんな恋愛に無関心な奴がモテるんかな」


放課後に寄ったコンビニの店先でアイスを口にしながら盛大に溜め息を吐く航太が、世も末だと言うように愚痴を零す。

統計的に見てモテというものに属する自覚が出てきた俺も全くの同感なのだが、不満げに言われると複雑な心境になる。


「知らねぇよ、そんなの」

「何だよ、その聞き捨てならない言い草は。俺のほうがノリは良いしイケメンだし、絶対俺のほうが良いと思うのになぁ」


確かに、それは俺も思う。

客観的に見ても航太は気さくで、男女共に俺よりも友人の数は多いから。

それなのに、驚いたことに彼女もその候補もいない。

おかしなものだと心から思う。

そんなことは決して言わないけれど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る