第9話
しかし、それから程なくして、真尋の母さんは亡くなった。
真尋も菊乃も俺も、退院は体が回復したが故のことではなかったのだとその時に知った。
真尋の母さんの、たっての願いだったらしい。
真尋は泣いた。
父にすがり、母の亡骸にすがり、母の退院以来流していなかった涙をたくさん流した。
そして、それは葬式も終わり初七日が過ぎても変わらなかった。
学校にも行かず、部屋に閉じこもって出てこない。
誰もが心配していたけれど、どうすることもできなかった。
俺は、真尋と一緒にいた。
特に何かをした訳じゃない。
ただ黙って傍にいた。
真尋が泣けば一緒に泣いた。
できたのはそのくらいだ。
それが良いと思ったのでもなく、そうすることしかできなかったから。
すぐ近くで真尋が悲しんでいても、何もできない。
指輪をなくした時やいじめっ子との喧嘩の時とは訳が違う。
気の利いた言葉も言えないし、打開策も見つからない。
無力だった。
10歳かそこらの俺には、ただ手を握っていることしかできない。
歯痒かった。
悔しかった。
強くなりたいと願った。
真尋のために―――
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