第2章 追憶

第5話

第2章【追憶】





俺達はいつも一緒だった。

それこそ生まれたばかりの赤ん坊の頃から。


元々真尋の父さんと俺の親父が幼馴染みで、その後高校で菊乃の父さんと知り合ってからというもの、それぞれが職についても結婚をしても友人として過ごしてきたという事もあってか、この世に生を受ける前から決められていたと言われても納得してしまうような状況下。

俺が十月、真尋はその八ヶ月後の翌年六月、菊乃はその後の十一月に生まれ、俺達は共に眠り、共に遊び、共に泣き、共に笑って育った。


自分に物心というのがいつ頃ついたのかなんて覚えていやしないが、恐らくその頃には一緒にいるのが当たり前という認識はあったんだろうと思う。


両親達の話では、真尋と俺はよく衝突していたという。

玩具を取り合い、菓子を取り合い、比較的おっとりしていた菊乃の横でいつもバトルを繰り広げていたそうだ。


両親同士、頻繁に外出やホームパーティーの約束をしては集まり、当然ながら同伴させられていた俺達は行く先々で撮られた写真の中に必ず3人で収まっていた。



しかし、それが変わり始めたのは、俺が四歳になった頃。

真尋がピアノを習い始めた。


先生は真尋の母さんで、自宅で地域の子どもにピアノを教える講師をしていたが故の自然の流れだった。

五歳でバイオリンに乗り換えるまでは真尋にはこのピアノのレッスンを受けるために拘束される時間ができたため、僅かではあったが俺達が顔を合わせる機会は減ることになる。


その後も菊乃が家の家業である合気道を習い始めたり、あまり長くは続かなかったものの俺もいくつか習い事をしたりしたため、三家族が一同に会する場面も多くなくなった。


ましてや俺は一人性別も学年も異なる。

二人より早く幼稚園に入園し、そこで新たな友達ができた。

自分から好んで遊ぶのは自ずと同性の友達と、ということが増えるようになる。

それは真尋も菊乃も同じだった。


でも、それは単に程良い距離感の間柄になったというだけのことで、それでも自由にそれぞれの家を行き来し、やがて俺達三人は「幼馴染み」と称される関係になっていった。

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