第11話 出発
瑠璃の細く柔らかい髪の毛をツインテールにし、俺自身の準備も終わらせいよいよ映画館に向かおうとしたが春山から瑠璃にはロリポップのグッズを持たせるように言われていたので声をかける。
「瑠璃、持っていきたいロリポップのおもちゃ持ってきな」
「うん!!」
玄関口まで来ていたが、瑠璃は急いでおもちゃがあるリビングに行きガサガサと音を立てながら選んでいるみたいだ。少しして瑠璃が両手いっぱいにおもちゃを持ってきた。
「にーに、これ全部持っていくの!」
「おぉ、すごいな…」
ぬいぐるみやら変身グッズやらで瑠璃の両手からこぼれそうだ。
「じゃあ瑠璃のリュックに変身の奴は入れとこうな、ぬいぐるみは抱っこして持っていこう」
「わかった!」
背負っていたリュックを下ろし、頑張っていれているが上手く入らないのだろう少し潤んだ瞳で俺の事を見上げてくる。
「うぅ、にーに…」
「はいはい、兄ちゃんが入れるからちょっと貸してな」
瑠璃と同じ目線までしゃがみ荷物を入れていく。
「瑠璃、立って後ろ向きな」
「ん〜?」
「リュックにちゃんと入ったから背負って行こうな」
「ありがと、にーに!」
リュックを無事背負った瑠璃はさっきまでの泣きそうな顔ではなく満面の笑みでほっとする。
出かける準備が出来た為、瑠璃の手を握り玄関を出る。
「瑠璃、出発だぞ!」
「しゅっぱーつ!!」
春山と約束している映画館は最寄り駅から電車で2駅先のでかいショッピングモールにある。
あまり電車に乗ったことない瑠璃は駅のホームでソワソワしている。いつもはお喋りなのに何も話してこないがずっと俺の顔をチラチラと見てきた。
「どーした?」
「んーん」
「電車乗るのちょっと怖いか?」
「んー…、ちょっとだけ」
「そっか、じゃあ次の次の電車に乗るか」
「でも、おそくなる?」
「大丈夫だよ、早めに家出たし電車が目の前で通るの1回見てからの方が怖さ減るだろ」
「うん!!」
瑠璃にとっては折角のお出かけだからな、楽しいだけで終わるように瑠璃ファーストを心がける。
駅のホームのベンチに座り乗る予定だった電車を見送る、どんな物に乗るのか見た瑠璃は
「次は乗れるの!」
と張り切った顔をしている。
そして時刻通りにやって来た電車にちゃんと乗り、外の景色を見たそうにしている為抱き上げる。
「うわぁ、すごいね!」
5分くらいで終わってしまう電車の旅を瑠璃は大満喫した、降りるのを寂しがるくらいに。
「さっ、今日の大本命が待ってるぞ」
「だいほんめい?」
「今日1番ってことだよ」
不思議そうな顔をしている瑠璃の手をひき、駅から徒歩5分のショッピングモールに向かう。
一応ショッピングモールの映画館入り口で春山とは待ち合わせ予定だが見渡してもいない。
「遅れるような奴じゃないと思うけど…」
「にーにのお友達いないの?」
「んー、もうちょっと待ってな」
連絡をとろうとスマホを出した瞬間、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「………はら、…笹原」
声のした方を見ると柱の影からこちらを見てくる、春山らしき奴がいる。
思わず瑠璃を連れ、近づいていくとその分春山が少しずつ離れていく。
「おい、春山!逃げんなって」
「に、逃げてないわよ!!ただ…」
「ただなんだよ」
「き、緊張してるだけなの!」
「はぁああああ?春山が会いたいって言ったんだろうが」
「……そうだけど」
「にーに、お友達??」
目的地に着いたのに早速カオスになってきた。
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