第8話 妹に交渉

家に着きそのままリビングに向かうと母さんと瑠璃がテレビを観て寛いでいる。この時間に帰ってきた事に少し驚いてるようだ。

「おかえり、学校早かったわね」

「おかえりなさ〜い」

「ただいま、まぁHRだけだったし」

喉が渇いてしまい荷物もそのままキッチンに移動し冷蔵庫からお茶を取り出す。

「お昼ご飯どうするの?」

「んぐっ、適当にカップ麺でも食べるから大丈夫」

「じゃあ母さんお買い物行ってくるから瑠璃とお留守番お願いね」

「うぃー」

「瑠璃もお買い物行きたいの!!」

瑠璃が通っている幼稚園も夏休みだし、この暑さで中々外遊びも出来ていないからか瑠璃は母さんに抱きつきながらお願いしている。

母さんは少し困った顔をしながら一瞬俺に視線を向ける。

(はいはい、俺がなんとかしますよ…)

「瑠璃、兄ちゃんと留守番しようぜ」

「いやー」

「えぇ、でも兄ちゃん瑠璃いないと1人で留守番になるんだけど」

「んー、でも…」

「瑠璃、お兄ちゃんの為にお留守番できるかな?」

「むぅ、ママからのお願いならお留守番するの」

「ありがとう、いい子ね」

「瑠璃、ありがとな!」

瑠璃は少し照れたような顔をしてまたテレビを観る。母さんは準備をする為にリビングから出たので俺もその後を追い、瑠璃に聞こえないよう小さな声で話しかけた。

「母さん、今度の小遣いよろしく」

「はいはい、この夏は凛太郎にも頑張ってもらってるしね」

「やりぃ」

「じゃあ、ちゃんとご飯食べなさいよ

行ってくるわね」

「はいよ、行ってら」

俺も荷物を置くのと部屋着に着替えるため自分の部屋に一瞬行き、速攻でリビングに戻る。

瑠璃はまだテレビに夢中な様なのでその隙にお湯を沸かす。ただ時間がかかるのでその間さっきの春山との件を瑠璃に話すことにした。

「なぁ、瑠璃」

「なぁに?」

「兄ちゃんお願いがあるんだー」

「お留守番は一緒にしてるよー」

「それとは違うお願い」

「おねがい?」

「兄ちゃんのとも…いやクラス…」

瑠璃に説明する為の俺と春山との関係性ってなんだろうと思ってしまう。なんという表現が1番いいのか分からずにいると、瑠璃の声が聞こえ目の前にあるお湯が沸騰した。お湯を慌ててカップ麺に注ぎ、テーブルに運ぶ。

「にーにのなぁに?」

「あー、そのとっ友達が瑠璃に会いたいんだって」

「お兄ちゃんのおともだち?」

「そうそう、友達もロリポップが好きみたいで瑠璃とお話したいみたいなんだ」

「ロリポップ!!」

ロリポップの言葉に食いついた瑠璃はテレビではなく俺の方に体を向けてきた。その瞳はキラキラと輝いている。

「今度兄ちゃんと友達と瑠璃で会いたいんだけどいい?」

「うん、いいよ!!瑠璃もロリポップのお話したいもん」

「なら良かった

ありがとな、瑠璃」

「ママにも言わないと!」

「ぶふっ、ゴホゴホ」

ラーメンを食べ始めた所だったが思わず吹いてしまった。母さんには内緒でいたかった為瑠璃のその発言は肝が冷える。

「その母さんには秘密にしないか?」

「えー、なんで?」

「瑠璃と俺の友達がちゃんと友達になってから言った方が母さん嬉しいと思うぞ…たぶん」

瑠璃は顔をぎゅっとして俺の言った事を理解しようとしているみたいだ。だがもう一押し必要そうだ。

「秘密に出来たら、ロリポップのお菓子買うから」

「おかし!!ロリポップの!!」

「1個買うから」

「秘密にするの!」

瑠璃の元気いっぱいな返答に安心し、伸びきったラーメンを啜る。

(次は春山に報告か…)

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