第7話 お願い

「ん〜、もううるさい!そんな声出さないでよ」

ほっぺを丸くし怒ってる顔をしている春山だが、そりゃ大声出るに決まってるだろう。

「それは仕方ないだろ、それに妹には会わせないからな!」

瑠璃をこんなワガママ女に会わせるのは教育上よろしくない。その為には今ここでちゃんと拒否しておく必要があった。

俺の拒否が気に食わないのか、春山の瞳が少し潤みほっぺもより一層丸くしてぷるぷる震えている。

「あ、会いたいだけなんだからいいじゃない」

傍から見たら俺がいじめているようだ。

「あーもう、泣きそうになるなよ…。

これじゃこの前と変わんねぇじゃん」

「だってぇ…」

上目遣いで俺を見てくる春山にこれ以上の拒否は出来なかった。

「はぁ、分かった今回だけ!

妹が良いって言わないと会えないし約束はできないけどな」

「えっ、ほ、ほんと?」

「今日妹に聞いて連絡するから、急かすなよ」

「分かった!待ってるから…」

怒ってた顔がぱっと明るくなり、少し笑顔が見える。丸くおさまり安心しているとちょっとした疑問が思い浮かんだ。

「なんでそんな妹に会いたいんだよ?」

たった1度、しかもちゃんとは会ってないはずなのにわざわざ俺と話す機会まで作ってお願いしてくるのが不思議だった。

「話したことないけど、私が狙ってたグッズを見てたから会いたいと思ったの」

「えっ、それだけ?」

「それだけってなによ!1番大事なことでしょ。

同じグッズに惹かれるなんて仲良くなりたいに決まってるじゃない!」

春山の熱意に圧倒される。

「そうか…」

理解する方が難しいのかもしれないと思い、もう全て飲み込むことにする。

ふと、腕時計を見ると1時間はたっていた為疲れたし暑いしで今日はもう家に帰りたくなった。

「とりあえず今日はもう帰ろうぜ。

妹に聞いたらちゃんと連絡するから」

「分かった。連絡ちゃんと待ってるから…」

校舎裏に来る為に歩いた道を帰る為に歩いていく。

少し歩き春山と距離が出てから呼び止められた。

「さ、笹原!今日はありがとう」

「またな、春山」

きっとお互いに初めてちゃんと呼び合った為、春山はどうか分からないが気持ちが浮ついてしまう中、また歩き始めた。

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