第6話校舎裏

重たい足を動かしながら、焼却炉がある為掃除の時にしか来たことのない校舎裏に着いた。

周りを見るがまだ春山は来ていないので、ジリジリと照りつける太陽から逃げようと木陰に入る。太陽に当たらないだけで涼しさを感じるが汗が止まらず不快になってきた。

「あちぃーな、…春山来ねぇ」

「ま、待たせたわね!!」

俺の独り言を遮る声が聞こえ、顔をバッとあげるとなぜか顔を赤くしている春山がいた。

「あー、いや、来たばっかだし大丈夫」

「そ、それならいいわ…」

呼び出したのは春山の方なのに中々本題に入らず、というかまともに会話すら出来ていない。

固く握りしめた両手を口の近くに持ってきてずっともじもじしている。そんな姿の春山を見るのは初めてで、あまり急かしたくはないがこの暑さなので待てず本題を切り出してしまう。

「あのさ、この間のショッピングモールだけどごめんな」

「……」

「えぇっと、泣かせるつもりじゃなかったというか

俺と同じで妹とか弟いると思ってつい見てただけで…」

「……ちがう」

「えっ?」

春山が小さい声で返事をしてくれた。赤いままの顔に少し潤んだ瞳が俺の事を真っ直ぐに見てきて、逸らせない。

そのまま春山は両手を胸の辺りまでおろし話はじめてくれた。

「私に妹とか弟いないだから、あれはただ…」

「ただ?」

「わ、私が好きなだけなのーー!!」

そう言って今日一番の大声を出し、胸の位置にあった両手も前に突き出している。

「うわっ、耳いてぇ…」

こんな大声が出せるのをびっくりしていると突き出した手を今度はほどきそのままの勢いで春山がどんどん俺に近づいてくる。

「ロリポップに関しては放映当時からハマってもう2年がたってるけど、今やってるのは第3期で私は初期から観てるの!

それでいつもグッズはネットで頼んでるけど、今回は店舗特典あったからちょっと見に行ったら…」

ちょっとでも体を前にすればぶつかるくらいの距離に詰められている状況だが、ドキドキしてしまう。

「私の狙ってたグッズ見てる子の近くにいたら、あんたも居たってわけ!!」

「そ、それって俺悪くないだろ?」

「で、でも私があの場に居たのを見たから悪いわよ!」

「えぇ…」

近くで見ると可愛い顔してるなとか汗かいてんのになんかいい匂いするとか思ってたのが、ただのワガママ女にしか思えない。疲れる。

「もう帰っていいか?」

「まだ!まだダメ…」

「じゃあ、あと何が言いたいんだよ?」

「わ、私の秘密見たんだから、いっ、妹ちゃんに会わせなさい!」

「はいはい、分かっ…

って妹、はぁあああ??」

今度は俺の大声が響き渡った。

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