第55話
「ゆっくり食べなさいよ、レオ。誰も取ったりしないから」
「…レオって、この猫の名前だよね?」
何とか栞の機嫌を良くしようと、克彦は再び明るく努めた。彼女の横に座り込み、猫の様子を見下ろす。
「栞ちゃんが付けたの?」
「…馴れ馴れしく呼ばないでよね」
栞はしゃがんでいた足をずらすように動かして、克彦から少し離れる。
「レオにも近付かないで。やっと私に慣れてくれたの、臆病で人見知り激しいんだから」
栞は猫を見つめながら言った。その瞳には、栞が本来持つ優しさが滲み出ていると克彦は思った。
圭子の話を聞く限り、この少女はわざと悪態をついているようだし、仕事上の経験から踏まえて考えても、無理に強がっている節にも見受けられるのだ。
「蓮井君の事だけど…」
克彦は、できるだけ慎重に言葉を選んだ。
「俺は、できれば彼を助けたい。自分の罪とちゃんと向き合って、前向きになってほしいと考えている」
「…何が言いたい訳?」
「良かったら、一緒に考えてほしいんだ。蓮井君のこれからの事を。一体、どうしたらいいのかを…」
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