第52話

来た時と違って荷物がなくなった為か、やや緊張した気分とは裏腹に足取りは軽かった。少し入り組んだ道のりでも迷わずに進み、やがて小さな公園が目の前に現れた。


 公園といっても、遊具はほとんどなかった。


 事故が相次いで危険な為と、回転式の遊具はだいぶ前に撤去されてしまい、今ではジャングルジムとシーソーしか残っていず、他は縁が所々朽ちだしている木製のベンチがいくつかあるだけである。


 そのうちの一つの傍らで、専門学校の制服を着た一人の少女がしゃがみ込んでいた。ベンチの下を覗き込み、何やらしきりに声を出している。


「レオ、レオ。ごはんよ、出てきなさい」


 少女は、その手に缶詰を持っていた。目を凝らしてよく見ると、どうやらキャットフードの缶詰のようだった。


「ほらぁ、あんたの好きな鰹ブレンド味よぉ?おなか空いたでしょう?」


 缶詰を開け、少女はベンチの下に向かって、さっと突き出す。すると相手はその行動に驚いたのか、ベンチの下の茂みからぱっと飛び出し、公園の外に向かって走りだした。

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