第47話
しかし、克彦は人混みで賑わうショッピングモールより、何年何十年もそこに存在してきたこの商店街の方が好きだった。
確かに品揃えや店舗の規模などを考慮に入れると、断然向こうの方が優れているし、全く勝負にならない。
それでも商店街の様子を見ていると、ここに来る客はただ買い物をするだけが目的ではない事が窺えた。
立ち寄った店の前に立つ主人やその奥さん、果てには全く面識のない通りすがりの者とまで、何やら楽しそうに笑いながら雑談を繰り返しているのだ。
このような風景は、大規模なショッピングモールでは見かける事などできない。
人と人の間にある温かみが残っている場所だからこそ見られるものであり、克彦はまさにそういう所が気に入っていた。
商店街に入って少し歩いた先に、何度か利用した事のある八百屋が見えた。正面には、真っ赤に熟した青森産の林檎が所狭しと並べられている。
「…よおっ、兄ちゃん!」
八百屋の主人が克彦に向かって、大きく手を振りながら声をかけてきた。どうやら、すっかり顔を覚えられてしまったようだった。
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