第45話

「俺も長い事、いろんなガキどもを見てきたが、あいつみたいなタイプは初めてだった。犯行の手順なんかは素直に喋るのに、それに至るまでの経緯や反省の言葉は一度も口に出さなかった。無理に聞き出そうとしたら、食って掛かってきやがったしな」

「…知ってますよ、大体の事は」

「かと思えば、今度は自殺騒ぎか。清水も大変だろうな」


 清水看守長と近藤が幼なじみらしいという事は、同僚の者から聞いていた。


 仕事の関係上、幼なじみでなかろうと、ある程度の情報は互いに得てしまうのだろう。


 克彦は、清水看守長と近藤が安い居酒屋で二人して乾杯し、互いの仕事の愚痴をこぼしている様子をありありと想像する事ができた。


「確かに大変ですが」


 頭の中の余計な想像を払い除け、克彦は口を開いた。


「時間が経った事で、蓮井も自分なりに反省し、罪を悔いているんです。ただ、その方法が間違っているだけで…」

「俺にはそうは思えんね」


 近藤が、さらに上着の内ポケットから携帯灰皿を取り出し、煙草をギュッギュッと押し付ける。わずかに残る先端の火種が、うっすらとか細い煙を浮かび上がらせていた。

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