第37話
そう思ったら、彰は自分がこうして存在している事が猛烈に許せなくなった。自分に対する怒りが急激に膨らんでいったのだ。
彰はおもむろにトレーの上のコップを掴むと、それを思い切り床に叩きつけた。コップはがしゃんと音を立てて砕け、中身の水が床に飛び散った。
食堂にいた少年達と、入り口付近で立っていた刑務官達の視線が一気に集中する。
それに構わず、彰は床に散らばった中でも一番大きな破片を拾い上げ、尖った先を自分の首筋に突き刺した。
「…なっ、何をやっている、九○二番!」
驚いた刑務官が首にぶら下げていたホイッスルを吹きながら、彰に走り寄ってきた。一瞬びくりと全身が固まったが、彰は破片を何度も首筋に刺した。
ホイッスルを聞き付けて、他の刑務官達も何人か食堂に押し寄せてきた。彰の首元が血で滲みだした時、大人達が彼の身体を押さえ付け、手にしていたコップの破片を取り上げた。
この瞬間、彰の中で何かが切れた。
何人もの大人が自分を押さえ付けている事による煩わしさと屈辱感、そして何にも変えがたい自分への怒りが混ざり合い、それが喚きとなって彰の口からほとばしりだした。
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