第36話
収監されて三日目の朝。初めて食堂で食事を摂る事になった。
それまで個別の部屋で一人で食べていて、非常に味気ないものだった。
誰かとおしゃべりという訳にもいかないだろうが、それでも誰かと一緒に食事ができる。少しは気分よく食べられるに違いないと、彰は安心していた。
しかし、そんな安心は食事が並べられたトレーを細長いテーブルへと運び、その椅子に腰を下ろした瞬間に脆くも崩れた。
その時、彰はふと顔を上げて、何気なく周囲を見渡した。
自分と同じ灰色の上下服を着た少年達は、食事の時間ぐらいがこの生活での数少ない楽しみなのだろう。本来ある年相応の笑顔を見せ、むしゃむしゃとうまそうに食事にありついていた。
これが普通の食堂かレストランだったら、至極当たり前の風景なのだろうが、彰の中で何故かそれは異様な光景に見え、何かが音を立てて壊れていった。
頭の中で、思考がぐちゃぐちゃに回転を始めていた。
(こいつらは、俺と同じじゃないのか?)
(何で笑っていられるんだよ?)
(何でそんなに、うまそうに飯を食っていられるんだよ?)
(もしかして俺が違うのか?俺だけが変なのか、別物なのか?)
(俺だけが、俺だけが…)
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