第34話
裁判官が彰の顔を覗き込むように見た。彰も上目遣いで見返すと、裁判官の表情に疲れの色が浮かび、その髪に少し白髪が混じっているのが見えた。
小林園長と橋本圭子が弁護士を新たに雇って、少年刑務所収監の『期間減少』を求める抗告を申し立てようかと、最後の面会で言ってきた。
「いくら何でも、五年と三ヵ月なんて長すぎる。彰は、彰はまだ十七歳なんだぞ…」
「彰君。私達が何とかするから、もう一度審判を受けましょう。諦めないで」
二人の言葉は嬉しかったが、別に諦めた訳ではなかった。
自分から見れば、裁判官の決定は至極妥当なものだし、これでもまだ足りないと思えてしまうくらいだった。外国では、未成年でも罪によっては終身刑になる事だってあるというのに…。
「別に、抗告なんていいよ」
彰は、微かに笑いながら二人に言った。
「何やったって、俺がした事は変わんないよ。俺、人殺しなんだからさ…」
そう言って、彰は静かに鑑別所の面会室を出た。それきり、二人には会っていない。
審判から五日後、手錠をかけられた彰は県郊外の少年刑務所に移送された。ぐるりと取り囲むように佇む高いフェンスと有刺鉄線が、やけに印象的に見えた。
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