第28話
†
「すまん、痛むか?」
医務室で、彰の両腕に消毒液を吹き掛けたところ、彰が「うっ」と小さく唸ったので、克彦は慌てて謝った。
時間は午前三時をとうに回っているので、医務官は勤務時間を終えて帰ってしまっていた。
必然的に、克彦が彰の治療をする事になったのだが、こういう事はあまり器用じゃない克彦はさっきから手がまごついている。
「先生って」
彰が涙目で話しかける。先ほどの混乱した様子はすっかり失せ、その表情も本来の少年らしさが戻っていた。
「本っ当に不器用なんですねぇ…」
「悪かったな」
苦笑を漏らしながら、克彦は消毒し終わった彰の両腕に清潔な包帯を巻いてやる。しかし、それも何となくちぐはぐとしていて、きちんと巻けていない。それを見て、彰は思わずぷっと小さく吹き出した。
「ヘッタクソ…」
「お前、他の先生達にはそんな口をきくなよ?看守長も言ったが分かってるな、謹慎五日だぞ」
「はい」
所々が緩く巻かれた包帯を気にしながらも、彰は素直に頷いた。その後、彼はこちらを窺うような上目遣いで「先生…」と声を出した。
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