第26話
少年は克彦と目が合った事に気付いた途端、ギロリとした光を宿した瞳で睨み返してきた。
一瞬、克彦はたじろいだが、すぐに毅然とした姿勢で少年を見つめ返す。
長い時間のように思われたが、それは先輩刑務官の大声によって短い対峙と認めざるをえなかった。
「これより中に入る!列を乱さずに入れ!」
再び命令された少年達は、その言葉に渋々といった表情で従い、ゆっくりと門扉に向かって歩き始めた。
克彦は少年達の列をじっと見送っていたが、対峙した少年はその姿が門扉の中へと消えていくまで、じっと克彦を睨み続けていた。これが最初の出会いだった。
次に克彦が少年と出会ったのは、その二時間後。場所は事務棟内にある面接室であった。
自分が担当・指導していく少年に会うという事で、未だ残っている緊張感を引きずりながら面接室のドアをくぐった。
だが、こちらを向いて待っていた清水看守長の横に立っている少年の顔を見た瞬間、克彦は思わず「あっ」と小さく声をあげてしまった。
茶色の髪を丸刈りにされ、灰色の上下服を纏った先ほどの少年は、だいぶ印象が違って見えたからだ。
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