第25話

同僚の一人がからかい気味に囁いてくるので、ついムキになって言い返す。その間に護送用のワゴン車が現れ、彼らの前でゆっくりと停車した。


 助手席に乗っていた威圧感のある先輩刑務官が先に降りてくると、若い彼らの間にさらなる緊張が走った。


 先輩刑務官は克彦達を嘗めるように一瞥した後、くるりと背を向けて、ワゴン車の後部座席のドアを開けた。


「全員、速やかに降車しろ!」


 命令を受け、数名の少年達がゆっくりと順番にワゴン車から降りてくる。その両手首には手錠がかけられ、腰には逃亡防止に縄が括り付けられており、それが一人一人と繋がっていた。


 ワゴンから並ぶように全員が降りてきた時、克彦は自分の鼓動がいつもより若干速くなっているのを感じていた。


 少年達が護送されてくる度に思うのだが、一体彼らはどのような環境で生きてきて、そしてここに来るまでに至ったのだろうか…。


 どんな少年をこれから担当していく事になるのだろうかと思い巡らせていた時、克彦はふと、横一直線に並んだ少年達の一番左端にいた者と目が合った。


 白い開襟シャツとGパンを身に纏った少年で、髪が茶色に染まっている。


 身体付きも他の少年達に比べるとがっちりしているので、より大人らしい印象があるのだが、その頬には十代の証明であるにきびの痕があった。

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