第24話
九○二号室のドアを出る際、清水看守長が小さな声で克彦を呼び止めた。
「これ以上の騒ぎになると、もう上が黙っていないぞ。もしかしたら、医療刑務所への移送を考えてくるかもしれん」
「分かってます…」
「充分に言って聞かせろ。こんな事を繰り返しても、決してそいつの為にはならんのだからな」
「はい…」
†
克彦が九○二番の少年――蓮井 彰と出会ったのは、この日より九ヵ月と十八日前の早朝の事だった。
その日、克彦は住宅地よりやや離れた県郊外の少年刑務所の門扉の前で緊張気味に立ち尽くしながら、移送されてくる少年達を待っていた。
そのうちの二人、あるいは三人ほどを自分一人の責任で直接、担当・指導していく事になるのだ。
刑務官となって三年目。初めて担当を任される事になって、前の晩は不安と緊張でほとんど眠れなかった。
やがて、朝靄の中から車のエンジン音が聞こえてきた。克彦の身体はぴしゃりと堅くなり、その場にいた同僚達は思わず苦笑した。
「おい。今からそんなんだと、これから先がもたないぞ?」
「…分かってるよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます