第18話
そう言い放ち、清水看守長は克彦に背を向けて奥まった廊下の向こうへと走りだした。
一瞬、克彦の脳裏に、今より約十二時間前の出来事が浮かんだ。
彼は昼食後の休憩時間、運動場の隅でぽつんと座り込んでいた。自分が声をかけた時、彼は擦れた声でぼそりと言った。
『何で、俺だけ生きてんだよ。何で、俺だけ死ねないんだよ…。頼むから、俺の事ほっといてくれよぉ…』
「蓮井…!」
一体、これで何度目になるのだろうか。
嫌な気分を抱え込み、克彦は看守長の後を追って走りだした。
仮眠室がある一階の廊下を端まで走ると、階上へと続く階段がある。
それを二段飛ばしで駆け抜け、清水看守長の横に並ぶ。そのまま一気に三階まで上ると、二人は細い廊下に出た。
廊下に出ると、すぐ目の前に巨大な鉄格子が行く手を阻むように設けられている。脱走防止用に作られたもので、克彦達が常時携帯している専用の鍵がなければ、決して開かない仕組みとなっていた。
清水看守長が鉄格子の右側にあるドアノブを掴み、腰に付けている鍵束の中から一つの鍵を選んでそれを鍵穴に差し込む。鍵は難なく開かれ、二人は先に進んだ。
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