第17話
「高崎っ、高崎刑務官!今すぐ起きろ!」
聞き慣れた野太い上官の声に、推理小説を読んでいる時とは全く違う緊張感が湧き上がり、克彦の身体がびくりと跳ねた。
素早く「はい!」と声を返すと、しおりも挟まずに本をベッドへ放り出し、代わりにベッドの脇に置いてあった紺色の鍔帽子をしっかりと頭に被る。金色で縁取られた桜の大紋が半月の光を鈍く反射した。
足早にドアへと近付き、一気に内側に向けて開くと、克彦は目の前に立っていた上官に向かって敬礼した。
「遅くなって、申し訳ありません!清水看守長!」
「今、決まり切った挨拶は必要ではない」
長身の克彦より少し背の低い清水看守長が、彼を見上げて睨んだ。しかし、その口調は何故か急き立っており、心なしか呼吸も乱れているようであった。
「何かあったのでありますか?」
変に思った克彦が口に出して聞いてみた。清水看守長は間を置かずに答えた。
「あいつだ、あいつがまたやっている!今、他の奴らが押さえているが一向に埒が明かん!お前も手伝え!」
「あいつって、まさか…」
「ああ、そうだ!九○二番だ!」
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