第16話
実際、克彦の自宅マンションの自室にある本棚には、その作家のデビュー作から近年に至るまでの作品が所狭しと並んでいる。
その他にも、気に入ってる小説や好きな作家が多数存在するので、本棚に埋まり切らずに物置やクローゼットの中にも収めてしまう有様だ。
結婚二年目の妻には呆れられるし、友人達は口を揃えてからかう。
『…二十六歳で、趣味が読書?もっとアウトドアな事に関心を持てよ』
とは言っても、実際、これが楽しくて面白くてどうしようもないのだ。
今、克彦が読み進めているのは、犯人が第二の被害者にせんとする女の寝室へ向かっている場面である。
一人目を殺害した事で、犯人の怒りと殺意はさらに保たれ、ナイフを握り締めて一歩、二歩と近付いていく。
女は何も知らずに寝息をたてている事だろう…。犯人の足が、女の寝室の前で止まった。
犯人の中の本能が告げる。
殺せ、復讐の為に殺せ!
さあ、そのドアをノックしろ。女がドアを開けた瞬間に…。
克彦の緊張がまた最高潮に達しようとした瞬間、仮眠室のドアを乱暴に叩く音が彼を現実に引き戻した。
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