1. 出会い

(1)[15~31P]

第15話

ふと、高崎克彦は仮眠室のベッドの中で身を起こしてみた。


 壁の高い位置に設けられた窓から差し込む半月の光を頼りに、左腕に付けたままだった腕時計を覗くと、秒針が午前二時十分をちょうど過ぎた時であった。


 三時間与えられた仮眠時間のうち、約半分ほどで目が覚めてしまったのだ。


 ふうっと、深い溜め息が漏れた。何だか、少し損をした気分だ。寝直そうにも、これほどばっちりと瞼が開いているのでは、とても眠れそうにない。


 まあ、疲れも少しは取れた事だし、別に構わないだろうと克彦は諦めた。


 ベッドから立ち上がって仮眠室の電気を点けると、眠る前に手にしていた読みかけの推理小説を枕の側から持ち上げ、ベッドに腰を下ろしてから続きを読み始めた。


 それは先月に発行されたばかりの、とある人気推理作家の新作であった。この作家のファンを自負しているだけに、克彦はページを捲るたびに胸が踊った。


 大胆不敵な犯人の行動とトリック。それに頭を悩ませ、解決に導こうと動く主人公…。独創的で筋の通った文脈と作風が気に入っていた。

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