第12話

佐伯班がこの男を『犯人らしき』と推定したのは、その白いTシャツの所々や彼の両腕が鮮血に染まっていたのを見たからに違いなかった。


「…おい」


 隊長が男の後ろから声をかけてみた。


「お前が、この家の人達を殺したのか?」


 Tシャツの男は、やっと人の言葉に反応できたかのように、ゆっくりと頭を上げた。


「何を持っている?」


 少しだけほっとして、隊長は言葉を続けた。


 男の抱いているものを覗き込むように見つめたが、その背中が陰となって、やはり大きな白い袋という事ぐらいしか分からなかった。


「…うるさいなぁ…」


 ふいに、初めて聞く声が辺りに小さく響き、全員が身構えた。佐伯班は盾と拳銃を持ち直し、飯沼班は腰の拳銃に手を掛ける。


「さっきから何なんだよ、あんたら…」


 声の主が誰なのかを最初に見抜いたのは、その者の一番身近にいた隊長だった。


 声を発していたのは、Tシャツの男だった。少し甲高く若々しい声色である。

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