第11話
ばたばたと足音を響かせて、やや広めの庭に立った彼らがまず見たのは、佐伯班全員が円を描くように銀色の盾を並べ、その隙間から拳銃を突き出させている姿だった。
それより少し離れた隅の方には、大きな白木蓮の樹木が一本植えられており、その枝の一つに太縄と板で造られた簡易ブランコがぶら下がっていた。わずかな風に揺れて、キィキィと軋む音がやけに大きく聞こえる。
「いいか、抵抗するんじゃないぞ!ゆっくりとこっちを向け!」
佐伯班の班長の怒鳴る声が円陣より聞こえた。
しかし、取り囲まれているであろう『犯人』が応えた様子はない。班長がもう一度同じ言葉を繰り返したが、全くの無反応だった。
怪訝に思った隊長は、佐伯班の円陣の背後からゆっくりと近付いてみた。部下達の背中や盾を押し退け、円陣の中央に歩を向けたのだ。
「た、隊長!危険です!」
誰かの呼び止める声が耳に入る前に、彼の瞳は円陣の中央で力なく座り込んでいる人間の姿を捉えた。
それは、白いTシャツに、黒の綿ズボンを穿いている男だった。完全にこちらに背を向けた格好で、何かを詰めているような大きな白い袋を両腕で抱き締め、項垂れている。
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