第10話

この男は、確かに『あのクソガキ』と言った。


 当然、自分達を襲った犯人の事を呪って言った言葉だろうが、何か違うものを感じた。何かニュアンスが違うと言うべきなのだろうか、何かが…。


 その時だった。


「隊長!隊長ぉ!」


 明らかに、自分の後方にいる部下達とは違う別の声が家の外から聞こえてきた。


 全員が一斉に声が聞こえた方向を見やる。


 すると、ソファが置かれた位置より、さらに向こう側にあるアルミサッシの大窓を佐伯班の一人が懸命に叩いて、「隊長!」と何度も叫んでいる姿が見えた。


「どうした?」


 と、声をかけながら、隊長は大窓に駆け寄った。しっかりと掛かってあった鍵を急いで開け、大窓をスライドさせる。


「何かあったのか?」

「犯人らしき男を、庭で発見しました!佐伯班全員で取り囲んでいます!」


 その言葉で、隊長と飯沼班全員に新たな緊張感が走った。一瞬の間を空けて、彼らは大窓から庭へと飛び出していった。

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