第7話
「ダメだ、ひどい殺られようだ…」
彼が小さく、太い声を搾り出すように吐き出した次の瞬間、その場にいた全員が同じ事を思った。
今、確かに聞こえた。
消え入りそうなほどにか細いものだったが、確かに聞こえた。血痕が続いていた右側奥のドア越しに、人の呻き声が聞こえたのだ。
誰かがいる。誰かが、あのドアの向こうにいる。
そう確信した武装警官達は、隊長の指示を仰ごうと一斉に視線を向ける。彼もそれを承知し、無言で素早く右側奥のドアの前まで駆け寄った。今度は、部下達を自分の後ろに付かせた。
ドアの側の壁に背中を預け、右手をゆっくりとドアノブに掛ける。玄関を開けた時と同じ要領でそれを捻ると、内開きとなったドアの隙間から、そっと中を覗いてみた。
ドアの向こう側は、居間と食堂を併せたいわゆるリビング・キッチンとなっていた。
十二畳ほどの広い空間の左方向に、食卓用と見える大きな机に椅子が三脚並んである。それらよりさらに奥まった所に見えるドアの向こうは、恐らく台所となっているのだろう。
彼らはゆっくりと、空間の右方向へと顔を向けた。
そちら側は家族がくつろぐ為であろう、柔らかそうな絨毯が敷かれ、その上に大きめの液晶テレビとソファが置かれている。
ただ、それらが異様に見えたのは、やはり間違いなく鮮血に染まっていた為であった。
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