第6話

そこにあったのは、下着姿の中年女性の死体だった。


 歳の頃は三十代後半といった感じか。俯せの状態で、上半身は階段に寄り掛かるような格好で息絶えている。


 俯せの為、非常によく見える背中には無数の刺し傷が生々しく残っていた。


 恐らく、鋭利な刃物で何度も何度も刺されたのだろう。この周囲の血痕は、全て彼女のものと考えて間違いない。


 死体に触れないように、隊長はそっと身を起こした。


 もしかしたら、凶器がその辺に落ちているかもしれないと考え、顔だけを小刻みに動かして周囲を見回す。


 しかしその時、彼は目の端に遺体の頭部を捉えてしまい、次の瞬間、思わず仰け反った。


 彼女の頭は、見るも無残に裂けていた。


 髪の毛に覆われて露骨に見える事はなかったが、それでも裂傷を負ったその傷からは割れた頭蓋骨が現れ、その隙間から脳がぐちゃぐちゃにはみ出ていた。


 まさか、刺しただけでは飽き足らず、とどめに何か鈍器のような物で殴り付けたというのか。しかも、こんなになるまで…。


 胸の奥から嫌な感覚が昇り詰めてくるのを覚えた。


 隊長はゆっくりとその場を離れようとしたが、心配そうにこちらを見やってくる部下達に気付き、何度か深呼吸をしてから、静かに首を横に振った。

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