第4話

辺りに充満していたであろう血液特有の錆付いた臭いが、彼ら全員の鼻をついた。


 職業柄、凄惨な現場を見る事には慣れているが、やはり気分のいいものではない。その場にいる全員が、自分の脈拍が若干速くなっている事を自覚していた。


「…た、隊長!」


 ふいに、やや後列の側にいた十五人のうちの一人が、前列にいる仲間達の肩越しに見えた『あるもの』に気付き、思わず大声を出した。


 その声に隊長が振り返ったと同時に、彼は仲間達を押し退けるように歩を進め、上司の横に着いてから自らの指をある方向に指し示した。


「あ、あれは…」


 隊長と残り十四名の武装警官達は、彼の指差した方向を凝視した。


 玄関より先は奥まった細い廊下となっており、陽が落ちている上に窓がないせいか、突き当たりは薄暗く、二階へと続く階段はぼんやりと浮かんでいるように見えた。


 その階段までの道のりの壁には、玄関からやや進んで右側に二つ、そこから先に五、六歩分ほど離れた左側の壁に一つ――合計で三つのドアが並んでいる。


 そのうちの一つ、右側奥のドアの下から続いている血痕は、明らかに他のものとは大きく違っていた。

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