第2話

「…隊長、どうしますか?」


 一人の若い武装警官が住人達の様子を肩越しにちらりと見やった後、一隊列の先頭に立つ大柄な男にそっと耳打ちした。


「自分としては、もう突入した方がいいと思いますが…」

「うむ…」


 住人達のざわめきを気にしていたのは、彼も同じだった。


 全く何事もなければそれに越した事はないのだが、もしこの家の中で『何か』が起こっているのだとしたら、これ以上自分達は手をこまねいている訳にもいかない。


 何より、ここに住み続けていく彼ら一般市民を不安から早く解放してやらねばならないのだ。


 これは警官として、今、自分が果たさねばならない責務なのだと、隊長は自分自身に言い聞かせた。


 「よし」と、隊長は短く言い切り、力強く振り返って部下達に命じた。


「これより三班に別れる。俺と飯沼班が玄関から、佐伯班は勝手口から庭へと突入。本山班はここで待機だ。何がどうなっているか分からん、焦らず静かに行動する事を厳命する!」


 隊長の指示により、武装警官達は素早く三班に別れ、迅速に命じられた通りの行動を取った。

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