中級編:想像式魔法行使
はじめに
これから記す中級編については魔術回路:テンレイスが開いて尚且つ操作が出来るようになった皆様向けの書に当たります。中級編は魔法術式の構築による発動までの手順になりますが、使用にあたり人様の迷惑にならない様に注意してください。
師:ガルマレリスト曰く、魔法というのは人々が人々を守る為に研究構築を繰り返し成しえ、脈々と受け継がれてきた血と汗の情報結晶であると。ですので使用については細心の注意を払い意味のある利用方法でご使用願います。
2:魔法術式:グリモア
この世界にも過去に異世界転生により魔法術式を書に残したグリモワールと呼ばれる魔術書が多く存在します。こちらの内容を読んで多くの魔法術式を学んだ研究者がいるのに対し、なぜこの世界では魔法が普及されていないのか。それは魔術回路:テンレイスが開いていないからなのです。仮に魔術回路が開いていない人がグリモワールを読んだ所できっと何が書いてあるのかさっぱり理解出来ない事でしょう。
何故ならグリモワールは【読む】ではなく【感じる】事で情報を得る魔術書だからなのです。つまり魔術回路:テンレイスが開いていない人には感じる事が出来ないという訳です。
ここではグリモワールに書いてある本来の魔法術式:グリモアとその発動方法について記していきます。かなり難解な内容ですので何度も挑戦して挫折してを繰り返す事になるかと思います。私もかつては心が折れて書物を破り捨てそうになった事があります。ちなみにアルファドマ帝国の書庫で魔法書物を破いたり勝手な持ち出しをした場合は即刻死刑になりますので異世界転生した際はご注意ください。
方法①:魔術回路の超収束:テンレイセンシス
身体に刻まれた魔術回路:テンレイスを凝縮して発動する事で如何様な魔法にも変化します。夢にまで見た火や水を操る事も夢の世界ではありません。ただし貴方の魔法術式はまだ色のついていない絵具と同じで無味無臭の水にも近い存在です。無色透明の綿毛を感じ取れるようになった次の工程はその綿毛を人差し指の先端に超収束させる事です。
感覚的な部分になると難しいと思いますので、まずは頭の先からシャワーをかけて水浸しになりましょう。すると身体から重力に引っ張られて水が次々と落ちていきます。そして腕から流れた水が手を通り、指先に集まり重力で落ちる。この感覚に近いのが魔術回路の超収束:テンレイセンシスと呼ばれる物です。まずはその感覚を掴んでみましょう。
身体の中心から発生していたテンレイスバックを身体を伝い、腕を通った後指先へ集まっていく。そこでも集中してより小さく、より硬く、より強くあろうとします。魔法術式は身体の中心に戻ろうと強く反発しますが抑え込みましょう。指先が熱くなり綿毛が集まっている感覚がすれば成功となります。
私は当時某有名漫画の指に力を集めて銃をイメージして撃つ特訓を何度もしましたが、あんな方法では一生出来ません。手っ取り早いのは全力疾走してみてください。すると息切れして血液が早く流動しているのを感じるはずです。その意識に身を任せて指先に集中してみると案外容易く出来ます。
私の場合はロムソンという猪とダチョウを組み合わせた魔物に近い動物に追い掛けられながら体力の限界に追い込まれて死ぬ思いでやっと出来ました。
方法②:想像式魔法行使:イノライズ
皆様はきっと魔法には詠唱を読み上げる事で術式を行使するとアニメや漫画で知ったと思います。あれは全部嘘です。そもそも読み上げる事による術式行使は確かに存在しますが、あれはアルファドマ帝国の敵対国家であるフェルメンジニア帝国の中で裏社会で生きる闇術師が得意としていた禁忌の呪術:アラガンレムリアです。途轍もなく恐ろしい呪術ばかりであんな汚らわしい物に夢も希望もありません。お間違いのない様にお願いします。
私が記すのはあくまで詠唱ではなく想像式魔法行使:イノライズについてご説明致します。魔術回路の超収束:テンレイセンシスが出来る様になりましたがその魔法術式はまだ何物でもない存在です。なのでこれからその存在に形を与えていきましょう。
まずは無害な水の魔法から始めるのがお勧めです。魔法と言えば炎や雷からという気持ちも分からなくもないですが、魔法術式の超収束が維持出来ていない状態で急に想像式魔法行使を行った場合、火が出た喜びで集中力を失い身体全体に炎が流れ込み死亡するケースがあります。これらはアルファドマ帝国の中で最も恥ずかしい死に方と呼ばれる行為で、それで死んだ者は永遠に悔いを残したまま死ぬので魂が彷徨い続け心の浄化が出来ず一生苦しむと言われています。皆様はくれぐれもご注意ください。
水の魔法は指先のテンレイセンシスをイノライズする事で水玉を作り出す事が出来ます。まずはこの水玉を落とす事無く指先で留める訓練をしてみましょう。初めのうちは汗にも近い水でも構いません。そのテンレイセンシスを維持しつつイノライズする事を目的としています。
より水と仲良くなる為に海やプールに行く事をお勧めします。たくさんの水に触れて感じて、臭いを憶える為に鼻で吸ってみるのもいいでしょう。きっと咳き込むと思います。
冗談はさて置いて水という存在を頭の中に叩き込むのです。脳内で指先から水が零れ落ちるのを想像してみましょう。ポタリ、ポタリと何度も水滴が零れていきます。その水滴が重力に負ける直前の膨れ上がった塊になるのを意識して指先で集めていく。するとそれは拳ほどに大きくなり次第に指から離れて落ちてしまうか、テンレイセンシスを維持出来ずに身体がずぶ濡れになる事でしょう。
そこまで出来た貴方は既に想像式魔法行使:イノライズがどういった原理なのか理解出来たと思います。もしまだ難しいという方は魔術回路の超収束の維持からもう一度始めてみることをお勧めします。
方法③:想像式魔法行使の固定方法:イノライズアーセント
イノライズで想像した魔術回路:テンレイセンシスは姿形を崩して身体から離れると行き場を失い散り散りとなります。魔術回路を一定以上失うと脳神経障害により頭痛や吐き気、眩暈などといった症状が見られます。仮にその様な症状が起こり続けて尚も魔術行使を続けた場合、重症または死亡するケースもあるのでご注意ください。魔術回路は一定時間が経つと回復するのでご安心ください。
そこで発動した魔術回路を身体の中に戻す方法についてご説明致します。身体から離れた魔術回路は散り散りとなりますが、身体から離れない状態で魔法行使を終了した場合、体の中へと魔術回路が還ります。この固定方法の事を想像式魔法行使の固定方法:イノライズアーセントと言います。
まずは水を想像したら落とさずに自分の中に還るイメージを持ってみてください。指先から自分の体内に吸い込んで吸収するイメージに近いです。そうすれば魔術回路が自分の身体に巡り戻り、魔法行使が永遠に可能になるわけです。無理せず地道に努力すれば魔法は裏切りません。
慣れてくるとテンレイセンシスに形を与えて剣や防御壁なんかも想像できる様になります。もちろん砕かれたりした場合は身体から離れる事になりますので魔術回路は失われます。より大きくより頑丈な剣を作る為には、より強力な魔術回路とそれに加えたイノライズが必要となります。
私もゴベムラウ戦線で魔法使いとして戦争に挑んだ時は敵軍の強力な魔法攻撃を受け止めるべく防御壁を作り、それを砕かれても尚また精製してを繰り返し続けた結果、全身から血を噴き出して死にかけたのを思い出します。だからこそ無理はしてはなりません。
最後に
今回は魔法術式:グリモアについては説明しません。まずはイノライズを基本とした魔法術式を学んでみましょう。水がイノライズアーセントが可能となった暁には炎や雷といった多くの想像式魔法行使を行う事で広い分野で活躍します。書きながら聞いていただければと思いますが、上級編については読まない事をお勧めします。想像式魔法行使が可能になった今、魔法使いとしては山門級として人の役に立てる魔法使いです。しかして魔法術式:グリモアは危険が多く存在し、それでも伝えねばならない私の宿命があります。ですので書き記しはしますが楽しく魔法使いとして生きていきたいのであれば貴方はここで読む事を辞めるのをお勧めします。
それでも続きが気になる方は次回最終巻である上級編でお会いしましょう。
次回は明日(2024年10月11日)の19時公開です。
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