第1話 思春期性ドラスティック症候群
「君に出会って、僕の世界は色づき始めたんだ。」よく少女マンガ、特に読み切りなんかのラスト3ページで見るこのセリフ。ああ、勘違いされる前に言っておくと、僕は男だよ。母と妹に勧められて読む程度。話を戻すけど、すごいよね。これだけでドラマチックが演出できるんだから。だけどさあ、その”君”を失ったらどうするのさ?現実は残酷だぜ。少し僕の幼少期の話をしよう。ちなみにこれは僕が自分の異質さに気づいたきっかけ、始まりの物語。
小学生の僕は”アホの子”だった。楽観的が過ぎた。だけど、周りの人間に恵まれていたからどうにかなったんだよね。母さんは専業主婦で僕ら兄妹の面倒を見てくれて、父さんも休日は男飯、中華だったりイタリアンだったりを振舞ってくれたしさ。まあ、夏休みの終盤は宿題をやりなさいってせかされちゃったけど。そんな小学生時代は突如終わりを迎えた。小6の夏、好きな人が死んだ。近所に住む姉のような人だった。一つ年上の女の子。
別にその死に劇的なことは一切なかった。結局、病名を教えてもらえなかったけど、とにかく病気で死んだ。それだけなら、まだいいっていうのも変だけど、まだよかった。
「●●ちゃんは、娘はもう、、、、、、。」
死に際に立ち会えなかった。遺言とか聞けて、僕の胸の中で息を引き取ったのなら多少は救いがのにさ。実際は_現実は残酷なまでに一切の劇性はなくってさ。まるで、その死が大したことじゃないみたいで、好きな人がモブだって言われたみたいでさ。胸が張り裂けそうに、、、、、、。まあ、泣き叫び過ぎて嗚咽に赤が混じるぐらいには辛かった。
自殺してやろうかとも思った。けど、これは体験したことがない人は意外に思うかもしれないけどさ。自殺してやろうって気持ちもすぐになくなってしまったんだ。両親は心配してくれた。普通は泣き止んでも、死にたいってうわ言を呟いてるもんだろう?なのに、冷静なんだから。
「我慢しなくていい。泣きたいなら泣け。当たりたいなら当たれ。それを受け止めるのも親の役目だ。いや、役目なんてどうでもいいな。俺がそうしたい。」
親父はそう言ってくれた。きっと、僕が壊れてしまったと思たんだろう。まあ、合ってるんだけどね。流石だよ、親父。当時もそう思った。
僕は喜怒哀楽の内哀以外が消え失せた。とはいえ、周りに恵まれていたおかげで道徳だとか倫理観は人一倍しっかりしてたからサイコパスな行動には走らなかったかな。けど、そんな善良な人間に心配をかけたくないって思うのは当たり前のことだろう?だから、泣いた。とりあえずで泣き続けた。大体、一週間学校を休んで泣いては寝て枕を濡らした。けど、僕の涙はあの夕方、感情と一緒にアスファルトに零したのが最後だ。だから、枕に染みたのはただの体液だ。
そろそろ頃合いかなと思い、立ち直ったふりをする。そもそも落ち込んでいたのかわからず、そもそも、この壊れている状態が立ち直れたと言えるのかわからなかったから、これは立ち直れた振りだ。とりあえず、こうして僕は普通の男の子に擬態した。実際はどんどん人間から遠ざかっっているのにね。このころの僕は気づけなかった。そして、久しぶりの学校へ。
そう、僕から零れ落ちたのは感情だけじゃない。それよりももっと致命的なもの、
「はあ、僕の人生にハッピーエンドなんてないんだ。だから、僕はもうためらわない。」
保身もためらいも危機感さえも。これに病名をつけるなら、思春期性ドラスティック症候群。
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