第7話 礎を作る過程

ふぅ……。

大きく深呼吸をして、落ち着く。

ついにこの日がやってきた……。

待ちに待ってたよ。


VTuberお披露目の日だ。


今日1日で約10人のHESKAL2期生が配信を繋いでいく。

サブタイトルは、コネクト~次世代へ向かって~らしい。

良い名前すぎる!


そして、今私の前の人があと10分くらいで終わるかなとなっている。

もう機材準備は万端。

後は心の準備だけ。


(私はやればできる…そう、やればできる)


さっき怜夏さんにも応援されたし、両親も応援してくれている。

今皆が見てくれているのだ。


〈どうしよう凄く緊張するよ(>_<)〉


〈大丈夫!春陽なら出来る!私も緊張してたけど始めたら楽しくなったよ〉


〈まじか、頑張るよ〉


〈うん、頑張れ!〉


夜音は私より何時間か前に担当していた。

ゲーム配信をして、好調の良いスタートダッシュを切っていた。

流石の彼女、コミュ力を生かしていい感じに配信を持っていった。


凄いな~と感心している場合ではない。


私もあれくらいにならないといけない。

頑張ろ…ここが人生の山場だ。




「よし行こう!」



私はモニターに映し出された配信開始ボタンを押した。




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「あ、あ、聞こえる~?」


ー来たああ

ー次はどんな子かな

ー春陽?

ーええ名前や

ーもう8人目か、時間って早いな


「よし行くか!どうも私がHESKAL2期生の新人VTuber春陽だ!よろしく~!」


まずは台本通りに。

自己紹介から入る。


「私の趣味はまあいっぱいあるんだけどね、一番はこれかな?ゲームです!」


ーゲーム系か

ーよしよし

ーもう好き

ーゲーム好きまじか

ーおおおおおおいいね。


「割とガチなゲーマーだからいつか配信もやろうと思ってたり?」


視聴者にぼこされないように特訓はしとかないと。

はいつぎつぎ、


「で、私の目標はこれ!登録者数100万人!やっぱりこれでしょ」


王道であり、目標にするのにもちょうどいい。

簡単でもない、なんなら険しい道が続いているがなんとか頑張る。


「特技はないかなぁ。まあでもアニメとかなら多少話せたり?」


ーゲーマー女子やばい

ー熱い

ーもう好きかも

ー喋り方が好きだわ

ービジュ完璧


「で、ファンネームとかそこらへんは概要欄に載せました~!見てね!」


よし、まずは台本1つが終わった。

あと25分。


ここからが腕の見せ所というもの。


「自己紹介というのは終わりにして、質問コーナーやるんですけど。その前に」


まあもう私が言いたいこと言っちゃいますか。


「初回でゲーム配信出来るの凄すぎて、同期尊敬してます。」


ー分かる

ーそれな

ー初配信ゲームとかいうえぐい

ーやばすぎ

ーおもろい

ーちゃんと上手かった

ー斬新でいい

ーそもそも普通は自己紹介って5分動画なんよな


「え、そうなの?自己紹介って5分動画でいいの?」


え、まじ?ここまで30分頑張ろうという決意なしにVTuberって始めれる?



適当に自己紹介動画を調べると、


「時間、4分39秒……えぇせっかく用意してきたのに!!!」


コミュ力の私にしては頑張ったのに。

まあそんな愚痴垂らしたところでって話だよな。


「という話は置いといて、質問コーナー!じゃんじゃん送って欲しいな」


初配信で30分、つまり私って凄い!?


「お!質問来てる!なになに?

 〈HESKAL2期生の誕生おめでとうございます。

 質問です!どんなゲームをしているんですか?〉

 だって、ふーむ。」


「どんなゲームっか、私は結構戦う系が好きだな。それこそFPSとか?」


ーまさかのFPS女子

ー来た

ー求めていたものだ

ーHESKALやっぱ良い凄く

ー人選完璧や


「ゲームならなんでもやるよ。たぶん!」


時間をもてあそびすぎて色んなゲームに手を出してきた。

だからどんなジャンルも多少出来ると思う……。


「よし次!

〈春陽さん初めまして!これから頑張ってください!

 ところで、配信経験とかってありますか?〉

 うんあるわけないよ!」


あったら今頃ゲーム配信でもしてるわこのやろう。


「これから頑張っていくんだから見守ってね。」


ーうおおおおお

ー囲ええええ

ーうぎゃああ

ー見守ります

ー楽しみ


「質問どんどん返すよ、

 〈春陽さんこんにちは、

 ファンネームがスピカなんですけど意味って教えてもらえますか?〉

 あ、説明するの忘れてた」


説明なしで概要欄にペタッと貼っただけだった。

やっべ。


「スピカって春に見えるじゃん?春陽の春と掛けてるの。

で、私から見て輝くものはファンの皆だからさ。だからスピカ、伝わった……?」


ー教養足りてない系かも

ーこれは面白いキャラになるぞ

ーwww

ー草

ーわかんねえよ

ーちょっとわかった

ースピカっていいね。


「でしょでしょ、私が頑張って1日中考えた結果なんだ」


他にも色んなものを思いついたのだが、結果的にはスピカになった。

星じゃなくても良かったのだが、夜に配信をする私たちにとって星は割と身近なのかなって思った。


本当にそうかは分からないけどね。


「っと配信は楽しいですか?って来てる。もうね、楽しい!!!!」


まだ始まって10分が経過したくらい。

別にゲーム配信をしているわけでもないし、視聴者と異様に絡んだわけでもない。




でも、私が言っていることが全世界に伝わって、みんなと楽しさを共感しあえる。


VTuberって楽しいものなんだ、


そう感じた。

もう緊張なんて言葉は早々に消えていった。


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【後書き】

新作がジャンル別日間1位、並びに週間4位を記録しました~ありがとうございます!

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