第2話 選考突破へ

「え!?やった! 1次選考通った~!」


正直落ちるだろうなと思っていたこの1,2カ月。

けれどメールに届いたのは選考通過のお知らせ。

ちょっと嬉しい。


「お~春おめでとう~!次は2次選考?」


「うん、って次は会社まで行かないといかないのか…」


次は会社まで…外に出るのは苦手だな。


「しかも再来週!?はやぁ」


「あら、思ったより早いのね。じゃあいっぱい練習しないと」


「うん。でもどうしたらいいの…」


「私に任せなさい。頑張るわよ」


私がVTuberについて頑張ると決めて、怜夏さんもやる気満々だった。

彼女曰く、私が何かに挑戦するというのは珍しく、嬉しかったらしい。


「うう、頑張るしかないよね。頑張ろ」


ここまで来たらやるしかない。





ということで私の特訓2週間が始まった。


「春、手をちゃんと前にこうしてこうするのよ。」


「なるほど…」


「で、ちゃんと背筋は伸ばして」


「えぇ、し、しんどくない!?この態勢」


「しんどいけど当たり前よ」


「ひぇええ」


この1年間、社会から目をそらした罰は重い。

怜夏さんのもと、基礎からたたき込まれた…。







そしてやってきたHESKAL本社。


「うわぁついに来ちゃったよ…」


長い間クローゼットの奥底に閉じ込めていた制服を着て、準備万端。


家を出る前怜夏さんに、「本当に私が来なくても大丈夫?」

と死ぬほど心配されたけど、今ならもう大丈夫。


「でも、ここまで来たら私、やり切るよ」


夜、両親からも応援のメールを貰った。

失敗は成功のもとっていう言葉がこの世界にあるらしい。

何か元気が出てきた。


「行っちゃうか」


私はゆっくりと、ビルの中に入り込んだ。






「お客様、今日はどうされましたか?」


「え、えっと…」


うわ、知らない人と話すなんて久々だ。

緊張する~


「そ、その、HESKAL2期生?の2次選考の面接に…」


「良いですね、7階の会議室までお上がりください。頑張ってね」


「あ、はい、ありがとうございます」


親切な人で心が和らいだ。

そんなほわほわとした気持ちになりつつビルで7階。


会議室に入ると、私のような中学生くらいから大人の人まで。


皆ばらばらに座ってる…空気も圧が凄い…。


「えっと、これ、どこに座ったら…」


「ここの横空いてるよ~」


一番近い席の子に言われた。

その子の隣に座って、時間を待つ。

隣の子は、青色の眼、黒髪ロングヘア、肌白。


(綺麗すぎるなぁ…私もこんな人に)


と思っていたら、


「君、どこからやってきたの?」


と突然話しかけられた。


「えっと、私は…」


一応来た場所を言ってみると、


「え、知ってる街だ~いいね。」


「あ、そうだ君の名前は?」


「わ、私は夜桜 春です。えっと、あなたは?」


「私は赤坂あかさか 夜音よるね、よろしくね!今日頑張ろ~」


「え、あ、頑張りましょ」


赤坂 夜音さん。

凄い優しくてキラキラしてる人だな。


もう少し話して見ようかな、そう思った矢先、試験官みたいな人がやってきた。


「皆さん、こんにちは。HESKAL1次選考通過おめでとうございます!」


「今回は2次選考ということで集まってもらいました。けれど実は最終選考みたいなものなので頑張ってください。」


ええ?

実質最終選考ってこと?

急に不安が、、、


「皆さんは順番に呼ばれますので、そのまま待機しててください。面接が終わった方から帰ってください。以上です、頑張ってね!」


凄いあっさりと…。

そして名前が呼ばれ何人かが部屋を後にしていった。


「最終選考なんだ。緊張するね」


横の夜音さんがそうボソッと言った。


「まさかですよね…2次選考が最終選考だなんて」


「まあ、私は受かってみせる。そのために頑張ってきたもん」


凄い、彼女は。

自信に満ち溢れているし、実際コミュ力が高い。


それに対して私は…いやいやここで負けるわけにはいかない。


「私も負けずに頑張るよ、だからお互い頑張ろう!」


私のセリフに、彼女は引くかなってドキドキした。

けれど、夜音さんは笑顔になって、


「そうだね!」


そのタイミングで夜音さんは呼ばれた。


「じゃあね、また会えるといいね」


「うん!」


夜音さんは行ってしまった。



でも彼女のおかげで、少し肩の荷も下りた。

凄く明るい子だったな…。

でも私もあの子に負けないくらい頑張らないと。


「夜桜 春さん。どうぞ~」


よし、頑張ろ。

私は席を立つと、部屋を出た。


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面接の部屋に入ると流石に空気も違う。

ただ、お堅いというわけではなく、面接官3人とも笑顔で出迎えてくれた。


「夜桜 春です。HESKAL2期生になりたいです。本日はよろしくお願いします!」


さて、私の面接が始まった。









あながち、順調に進んだ。

私ながらに凄いと思う。

怜夏さんが作った質問もいくつか的中して、私にも余裕が生まれた。


「良いですね。では最後の質問です。」


「夜桜 春さん。あなたは人を笑顔に出来ますか?」


あの時と同じ質問だ。

でも、2か月前の私とは覚悟が違う。


「はい!」



今までにこんな声は出せなかったんじゃないか?

というくらいに一番威勢のいい声でそう応えた。


無事面接は終了した。

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『そうなのねお疲れ様。無事に帰ってくるのよ』


「うん、ありがと!」


怜夏さんに終わったことを伝えてスマホをバッグにしまう。


結果発表は来週らしい。

うーん、それまでが待ち遠しいよ。


「私よく頑張った~!」


とコンビニでご褒美にアイスを買って食べながらぶらぶら歩く。

外なんてほとんど歩いてなかったものだから、全てが新鮮に見える。


「うわ~あの店可愛い」


凄い、ちょっと歩いてみれば私の好きそうな店がたくさん…


ってあれ、帰り道ってどっちだっけ。


「や、や、やばい。迷子になっちゃった。」


ここどこ~、スマホを見ても道がいっぱいで分かんないよ。


「ど、どうやって帰ればいいの…」


うぅ、全然外に出てこなかったつけが回ってきちゃったよぉ。

道の端でしゃがみこんでしまう。


助けて誰か…。



「あれ、春?どうしたの?」



ふと私の名前を呼ばれて、上を見上げた。

するときょとんとした顔で、こちらを見ている夜音さんが居た。


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