第25話

バイト最後の日。その日もそれなりに忙しかった。

朝の内にゆかりさんにクッキー渡せて良かった。

さて、問題は和真くんのお弁当なんだけど。

休憩室の冷蔵庫の中。さすがにこの暑さじゃロッカーには置いとけなかったし。

和真くん、昼食は調理場で料理人さんに混じって賄いを食べるか外へ出るかなんだよね。

渡すタイミングが難しい。朝は渡せなかったし。そろそろ休憩時間なんだけど。

そわそわしてる私の肩を後ろから叩いたのはゆかりさんで

「比名ちゃん、お疲れ。先に休憩行っといで。」

「えっ?」

「最後なんだから遠慮しない。ね、圭子さん。」

「えっ、あ、まあそうね。」

「ほらほら最後なんだから今日くらい和真と一緒に行ってきな。」


「「は?」」

私と和真くんふたりの声が被る。

半ば強引にホールから送り出された。


「ちょっと、ゆかりさん…」

ドアを出る直前聞こえた声…圭子さん怒ってるんじゃないかな。

目の前にはすたすた歩く大きな背中。

ヤバい。早く渡さないと。和真くんを追い抜いて一目散に冷蔵庫を目指して走り出そうとしたのに…。


「おいっ。待てよ。」

後ろからぐいっと腕を捕まれた。


「きゃ。」

バランスを崩した体は意図せず和真くんの胸に抱き込まれた。

固まる私。

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