第22話

「プレゼントなら実はお願いがあるんですけど。」

思い切って口にしてみる。聞いてもらえるかな。ドキドキする胸を押さえて言ってみた。


「24日の夜、8時にバイトが終わったら少しだけ会ってもらえませんか。」

反応が怖くてうつむいたままお願いした。


「‥‥‥。」

返事がない。やっぱり迷惑だよね。


「せっかくのデートのお誘いは断れないな。」

しばらくの沈黙のあと返ってきた答えは笑いを含んだ穏やかなもので張り詰めた気持ちが一気に解れる。


「ありがとうございます。」

思わず頭を下げれば。


「デートに誘ってもらってお礼を言われた。」

佐々木さんに苦笑された。

当日の打ち合わせを簡単にするとウキウキで仕事に戻った。

加奈さんの嫌味も和真くんの心配そうな顔も気にならない。

計画は動き出した。

上手くいくといいな!

脳天気な私はこの時、これがきっかけでとんでもない事件が起こるなんて思っても見なかった。

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