第11話

ゆかりさんの言葉に気持ちがほぐれていく。


「私、お客様に気を使わせちゃったんです。」


「あらあらそれで、そんな落ち込んだ顔してんの。」

落ち込んだ顔。やだ顔に出てたんだ!


「仕事中は?」


「笑顔で接客です。」

最初に和真くんが教えてくれたバイトの心得。


「大丈夫。佐々木さん、比名ちゃんのこと優しい顔して見てるよ。」

「佐々木さん?」

「やだ、名前も知らなかったのね。」

こくりと頷く。


「私的な会話って何処までしていいのかわかんなかったし。」

ぼそりと言えば…。


「マジ!? それであれ?…ウケる。」

けらけら笑われた。

美人は得だ。どんな顔しても美しい。


「あ、あ、ごめん。」

笑いながら話を続けるゆかりさん。


「比名ちゃんを笑ったんじゃないのよ。」

じゃあ、誰を笑ったんですか。

まさか佐々木さんじゃないよね。

首を傾げる私にゆかりさんは


「これから面白くなりそう。楽しみね。」

何故かご機嫌な様子で。

何だろ。訳わかんない。

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