case9.土着信仰?
「んだ、おめアレんこと調べとんか」
「はい」
「どこさの大学生だ」
「え……××大学です」
「レポートにもんげ田舎の風習書く大学生だまともなわけねがな、教授に見放されたんだべ、哀れなこっちゃ」
「えっと……あの、アマノカエリ信仰について、教えては頂けない……感じでしょうか」
「町会さんの方も一人足りないべ、丁度いいだ」
「あの、アマノカエリ信仰について、」
「何度も言わんと聞こえてるっちゃ……そら、バイトん話だあ」
「バイト?」
「んだ、んだ。えらい前、バイトのアマノカエリが神様んなったら、そら崇めるべ」
「えっ、と……」
「アマノカエリはハイカラなおなごでな、言うこと聞かせたいべ、どすべ、て町会さんなったんだ。そんときバイトいうて外ん国の言葉使ってアマノカエリに神様させたんっちゃ」
「そもそも、アマノカエリは人名だったんですか?」
「んだ、別嬪な女だ。町ん男も虜にしちゃあ女が困る、町ん男共でどんどこ取り合うんも気が滅入る。でも神様に捧げちまえば全部丸なんべ」
「神様に捧げる?人柱的なものですか?」
「人柱は人聞きわるか、神様にしたんっちゃ。アマノカエリ様はわるかもん食べてくれる。こん村がそが害無いんも、アマノカエリ様ん御加護だ」
「はあ。つまり、災害を防いでくれる元人間のアマノカエリさんの信仰、それがアマノカエリ信仰という事ですね?」
「大体そん通りだべ。餌代が高い神様っちゃね、あんたみたいなんが来てくれると助かるべな」
「餌代?神様なのに、餌があるんですか?」
「当たり前だ。神様だってわるかもん食ってら腹壊す。腹壊して仇なっちゃあ、おらたちが困る。餌やって手綱しっかり握らんと、日本はダメんなる」
「捧げ物ってことですか。地蔵に饅頭供えるのと似てますね」
「んだんだ……」
「……どうしました?」
「……」
「あのぉ?」
「……」
「あ、えっと……お忙しいのにお話聞かせてくださって、ありがとうございました……?」
「おめ、なんも聞こえんか」
「え?」
「なんも聞こえんか聞いとんだ」
「え、あ、はい、いえ、すいません。もしかして何かおっしゃってました?」
「……アマノカエリ様んこと他に何聞いた」
「えっ……今聞いた話以外なら、資料で土着信仰だとは……」
「……アマノカエリ様が変になっとぉ」
「え?」
「町会に言うべ。変だ、変だ。おめは運が良い、今すぐけぇれ」
「は、はあ」
「村に来たら次ん時こそ餌っちゃ、大人しくけぇれ」
「……わかりました……」
「や、えらいこっちゃ、えらいこっちゃ。変になっとぉ、アマノカエリ様が変になっとぉ」
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【メモ】
・アマノカエリ信仰とは、土着信仰である。(期限的な問題により、土着信仰の中でアマノカエリ信仰に注目して研究を進めたい)
・アマノカエリ信仰地域をいくつかに絞った。これから順に巡る予定。
・①の地域バツ
・②の地域バツ
・③の地域バツ
・④の地域当たり。が、一人からしか情報収集が出来なかった。分かったことは以下。
・アマノカエリは元人間(女)
・神様にされた?人柱?
・悪いものを食べる、という点から守護神的扱いかもしれない
・餌?
・情報提供をしてくれた相手の様子が途中から不可解に。町会?アマノカエリに何かあった?神様が変になるとは?
・独特な言葉の訛り。辛うじて聞き取れるが、様々な方言を混ぜたような印象をうけた。村独特の言い回しなどあるのだろうか?研究テーマから逸れるが気になる。
・帰り道、④地域の人が着いてきた。棍棒?鉄パイプ?を持っていた為、偶然近くに留まったバスに飛び乗って逃げたものの、今後もこのような事態が起こるかもしれない。注意。
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※このお話はフィクションです。
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