case3.バンザイさん
「バンザイさんを見つけるバイト」って知ってますか。
あ、申し遅れました。私、██さんと一緒にバイトをしていた者です。とはいえ一回きりなんですけど。
貴方が██さんの情報を集めているのを偶然知って、つい連絡しちゃいました。大した情報にならなかったらすいません。
私と██さんは、「バンザイさんを見つけるバイト」でペアを組んでいたんです。そう、「バンザイさんを見つけるバイト」。変な名前ですよね?でも、求人サイトには一音一句同じ表記で載ってたんですよ。
時給?いや、あのバイトは時給制じゃなかったですね。報酬制、的な。バンザイさんを見つけた分だけ報酬が出るんです。バンザイさん一人あたり、五万とかだったかな。
あ、バンザイさんが何か分かんないですよね、すいません。
バンザイさんは名の通り、万歳のポーズをしている人なんです。両腕を上げて、ばんざーい!って。バイトの内容は、うーんと……メールでペアを組む相手を勝手に指定されて、指示が出た地域の公園を探す、とかだったかな。
バンザイさんは早めに見つけないといけないんです。あいつら、ブランコとかジャングルジムとか、そういう少し高いところに立って飛び降りちゃうんですよ。もちろん一、二回じゃ死にません。でもまあ、十回ぐらいやったら流石に……ねえ?だから、生きているうちに見つけないといけないんです。
なんで飛び降りているか、と聞かれましても。だって私、ただバイトしただけの一般人ですし。それにね、裏バイターってそういうの深堀りしちゃダメなんですよ。なんで、ってそりゃあ……ね、巻き込まれたら嫌じゃないですか。
あ、でも。
██さんはそういうの、ガンガン深掘りしようとしてた……気が、します。あれ、どうだったかな。
まあいっか。で、他に聞きたい事とかありますか?
バイトで気になった事?そうですねえ……
……ああ、そうそう、バンザイさんって頭から血を流してるんですよ。頭から飛び降りたから怪我してるんだと思ってたんですけど、それにしては出血量が凄かった気が……うわ、思い出しちゃった。ジャングルジムとかから飛び降りたってあんなんにはなりませんよ、普通。
そういえば██さんって今何されてるんです?……え?失踪した?……あぁ、そういえば失踪したとネットに書いてましたね。忘れてました、忘れてました。
ん?何してるんですか、って?
見て分かるでしょ。ロープ掛けてるんですよ。
いやほらね?私、バンザイさんって本当に馬鹿だと思ってて。だって遊具から飛び降りとか、そんなの時間かかるに決まってるじゃないですか。まあ、そうする発想しか浮かばなかったのかもしれないですけど。
私はまだ半分残ってるんで。まだ頭働いてるんですよ、ほら、だって今貴方とお話出来てるでしょう。
……よし。結べた結べた。
いやあ、今となっては分かるんですけどね。バンザイさんは拒否してたんですよ、この世の理不尽を。だっておかしい話じゃないですか。別に私、深入りとかしてないのに。
あー、もう!この姿勢、ロープ持ちづらい!
あ。もしかしてバンザイさんはこれが面倒であんな手法取ってたんですかね。登って落ちるだけなら楽ですもんね。そっか、そっか。
まあ、もう終わりなんで。今日は足運んでもらっちゃってすいません。
「バンザイさんいた!!っしゃ、五万ゲット〜!!」
あぁ、バイトが来ちゃいましたねえ。五万なんてやっすい値段で引き渡されるなんて御免ですよ、ええ。
でもこれで逃げられますから、実質私の逃げ勝ちみたいなものです。ばんざーい!ばんざーい!
ゴキッ
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※このお話はフィクションです。
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