「ハァ?」



眉間に皺寄せあんぐりと口が開く。それを見た善が「あはは」と心底おかしそうに笑うから、また揶揄われたのだと悟って口を引き結んで仏頂面を見せた。


「大丈夫、初めてとか言い出したら心未ちゃん、出逢った小二の時点で高一のアタシにちゅっちゅちゅっちゅしてたから」


「それは…っ!



ソウカモ」


見つめ合ってそう…そうか? と一応ちゃんと自問自答。あと一歩で腑に落ちないと答えを出す所で「ね」と押し切られてしまった。



「だからさっきのも謝らないよ、あれは心未ちゃんが悪いもの。アタシ言ったわよね?『男と二人きりになるような事しないで』って」



「だっ…て、

それ、今日天野とご飯食べた事言ってる? ……天野だよ?」


「そーね」


「善は天野と私より長い仲なんでしょ?」


「うん」


「それに、二人きりって言ったってこの前みたいな、部屋に二人でいる感じじゃないし」


「心未ちゃん」



今までこんな善を見たことがなかった。


確かにあれしちゃダメこれしちゃダメ危ないからって言い聞かせられたことは小さい頃からあったけど、だって、こんな。


天野が危なくないことくらい善が一番よく解っていそうなのに。



「取り敢えず一旦、マジで男と二人になるのやめて」



「っ」


私を見据えた眸。本能でビク、と肩が揺れた。見据えたというか——据わって、貫かれる。

これ以上弁明しようものなら簡単に片手が飛んできて、私の頭など壁に打ち付けられそうだ。



「茅も待って。良いって言うまで我慢できる?」


僅かに覗き込まれるも、目を合わすことができない。それを絶対解って善は、俯きかける私の短い髪に触れた。


「顔上げて」



「……っ」



「心未ちゃんのお父さんに会ってくる」




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