「何、揃いも揃って…そういう趣味? つらの良い男でも集めてんの? —…あー、善はこの男がいるからあんたが“抱けない女”ってわけね」


鼻で笑う女を、更に性格悪そうな男が笑い返す。


桐だけが何故この恐らく初対面の二人がバチバチしているのか掴めていない様子だった。


「可哀想な程察しの悪い女だな。あれがこれを一番にしてるならどー考えてもお前みたいな性悪女相手にしねぇだろ」


「はぁ?」


「?」


「…?」


これには、私たち三人ともが疑問符を浮かべた。


「茅が何言ったか知らねぇけど不動の一番がいるならそれ相応の理由なしに勃つほど男もバカじゃねーわ」



「ちがや?」


男は女を見ていて、桐は男を見上げていたけど。


私はこれが自分に向けられた言葉だと解った。


ただ。


「でも…っ善、滅茶苦茶えっち上手いから」



は?



「性悪女が相手でも絶対雑だったりすぐ挿れたりしないし、絶対女の子の気持ち優先で…でもちょっとSっぽい時もあって最高だから。あれを一生味わえないとかあー可哀想。可哀想なのはあんたの方」



この女、朝っぱらの社内で私等にしか聞こえない程度の声とはいえ、


一体何を言っている?


そして私等(特に桐)は何を聞かされている?


と、白目を剥きかけながら桐を見遣ると


桐の男が当然の如くがっつり両耳を塞いでやっていて、


防御なしだった私だけが、やっぱり白目を剥いた。




「はーざいまーす、って何? どした?」



肩を震わせる女としれっと耳を塞がれる女と直立で白目を剥く女、オフィスに出勤してきた天野は最後の女に「何で知愛くん 前坂ちゃんの耳塞いでんの」状況を問うた。つまりこの私だ。


「私にもよくわからん。善のえっがめちゃくちゃに上手いと」


「はぇ?」


「あ、ていうかあんた午後戻るんじゃ」


「? うん、忘れ物取りに来た」



そうだ、天野といえば。



「天野、昨日はその、迷惑かけたみたいで…。


天野が家まで送ってくれたの?」



「え?」


「?」


予想外な反応。何故か天野は反射的に私を通り越して後ろにいる同居人だか桐だかの方を見たからその視線の先を追う。が、無視されている。


「違った?」


「違わない」


何だよ。


「家入ったんだよね?」


「いや、それは流石に…最後は善「善? は私の家知らないと思うけど」


「善——の友だち?みたいなのに」


善の友だち?みたいなの?


言動が怪しすぎるが、そのポジションで私の家を知っているなら大方ナズナか芹かその辺りだろう。


「ふーん…? まぁいいわ何でも。その内借りは返す」


ありがとう、と小さく頭を下げながら内心感じた違和感が気になっていた。




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