第25話
日曜日。
冷静になって考えてみればこんな私事、親友然りその仕事を巻き込んでまで協力してもらって良いのか…?という不安が顔を出した。
一昨日は久々に善のそういう…色事的な現実を目の当たりにして、現状を変える事のできない自分に腹が立った結果勢い任せに桐に泣きついてしまった感も正直ある。
思っている事は、本心だけれど。
怖気づいているのか、挑戦に戸惑いながら桐の家のインターホンを鳴らす。と、すぐに奥の方から小走りする音が聞こえてきて安心する。
直接開けられたドアの先の親友は「オートロック入れたの。迎えに行くのに」と一瞬唇を尖らせた後いつものように人懐こくいらっしゃい、と笑った。
「お邪魔します…同居人は?」
「さっき丁度天野さんを迎えに行って。今日暑いねぇ」
「うん、あ、手土産プリンにしたんだ。冷蔵庫お願いしていい?」
「うわ〜ありがとう」
手を洗っていると桐が向かったキッチンの方から「あ! 今日はうちじゃないのか!」と聞こえてきて、洗面所に困り顔が覗いた。
「心未、天野さんたち直接隣行ったかも。
プリン食べるの後でも平気?」
元々聞いていた話に「プリンは手土産だから」と頷き手を拭いて、マンションの隣室へと向かった。
「本当に、男の人と二人きりで大丈夫?」
再びの蒸し暑さに包まれながら、「いやちょっと考えて最初からこの最終ステージっぽいシチュエーションはどうなのかな、危なくないかな怪しくないかな?と思い直してね、心未が不安要素あるならその場で棄権してほしいんだ」と心配そうな桐に私の分の不安が持って行かれる。
「言い出したの私だから。確かに未知だけど、その方がショック療法の可能性あるし段階踏んでもまどろっこしいだけかと、思って」
「う〜ん、そっか〜? 心未がそう言うのならいいのかな…」
頭を抱える桐が、いつもこういう時は善に相談しているからなぁって気を遣って言わないでくれているのが伝わってきた。
私も、そう思ったから。
大人数ならまだしも一対一で異性と目を合わせるのが難しい私にとっては二人きりになるという機会さえないもので。
人の良い桐が「良い人だよ!」とセッティング?してくれた天野という男が本当に良い人かどうかはこの際どうでもいい。そもそも男に良い人など端から期待してない。
気合いで、拳に力が入る。
「この隣、空室なんだけど元々知愛くんが住むつもりだったらしくてテレビとかそれなりの家具は揃ってるって言ってたからのもし気まずくなったりしても、ね! テレビとか点けて…や、天野さんなら必要ないかもだけど」
心配からか目を細め続けていよいよ目がなくなりそうな桐は何やらぶつぶつ呟きながら隣室のインターホンを押した。
「知愛くーん。あれ、居ないのかな」
「後ろ」
「っ」
「ぎゃあ!」
低い声が聞こえたと同時に影に覆われ、それを見た桐が声を上げた。
「へー」
私を覆った影の持ち主が、天野という男なのだろう。グレーアッシュの髪色の下の僅かに青みがかった眸が興味深げに自分を見つめている、
無理。
善と同い年だと聞いていて、善があの感じだからかつまりは全ての基準は善で形取られてしまっていて、思っていたより若くて、キラキラなのかチャラチャラなのかしていて、
無理!!!!
瞳孔開く私と「善絡みって言ったらもっと見た目も高飛車〜な感じなのかと思ってたけど、思ってたよりボーイッシュっていうか。どちらかというと前坂ちゃんよりの。小柄だね」と容赦なく傷を抉るようなどこら辺が良い人!?なこの男を交互に見つめる桐を放って
「暑い」
と一言、中に入っていく男が桐のクソ迷惑な同居人であった。
「ソウダネ! 一旦中入ろっか!」
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